体験案内
合格実績
ブログ

ブログ

Blog

ソレイユニュース 2024年9月号

pic

お盆中の8/14(水)、《アンドレイ・ピサレフ教授&パーヴェル・ネルセシアン教授カワイマスタークラス2024》の聴講に行ってきました。

 

このマスタークラスは、毎夏カワイ表参道で開催され、今年は8月10日から14日まで、両教授のリサイタルと優秀な生徒さんたちによるコンサートも含めて聴きどころ満載の、音楽フェスティバルの様相を呈しています。

 

両氏ともにロシアが誇るモスクワ音楽院教授(ボストン音楽院兼務)ですが、全く違った指導をされ、6人の受講生へのレッスン(各1時間)は、全く飽きることがありませんでした。

 

ピサレフ教授のレッスンは、生徒さんが水準以上の場合、難易度の高いパッセージを抜き出して指遣いを直したり、鍵盤から指を離さず弾くテクニックを教えたり等、数小節を時間いっぱい使って指導。時間に囚われず徹底的に細部まで懇切丁寧に入れていく、ロシアンレッスンそのものでした。

 

テクニック的に水準に達しない生徒さんには、先生お得意のモーツァルトを、コントロールされた美しい音色で模範演奏。聴講者にとっては、至福のひと時でした。

 

スクリャービン第5番のソナタをPとPPを駆使して作り上げていく方法は、少々意外でした。というのも、昨年6月に聴いた《イル・ド・フランス国際ピアノコンクール》で優勝したウクライナ人の男性ピアニストが弾くラフマニノフ第2番のソナタは、戦車での行軍を思わせる大迫力で、ピアノが壊れるかと思うくらいの音量。恐怖さえ感じたその音楽を、受賞後のパーティで審査員が絶賛していたため、ロシア音楽への興味が湧いたのです。

 

ロシアのピアニストといえば、《第16回ショパン国際ピアノコンクール》優勝のユリアンナ・アヴデーエワ。アヴデーエワの演奏を初来日で聴いた時も、誇張気味な音楽の作り方にヨーロッパの音楽との違いを感じました。

 

ロシアのピアニストで感銘を受けたのはイリーナ・メジューエワ。ソビエト連邦時代、才能ある子供には金と時間に糸目をつけず徹底的に教え込んだ政策の産物といえるピアニストです。指1本1本、腕、全てをコントロールし、どんな音色も自在に奏でられます。ヴィルトゥオーゾ(速弾き)なピアニストは現代では万といるけれども、多彩な音色を持つピアニストな希少です。

 

そういう意味では、ピサレフ教授は繊細で美しい音色を持つメジューエワに近い奏法でした。伝統的なテクニックを習得し、言葉と実演でロシア奏法を伝えることができる貴重な指導者だと思います。

 

もう一方のネルセシアン教授のレッスンは、作曲家や曲の背景を多く語る講演会のような興味深いものでした。曲の説明により、その曲が内包しているリズムが明確になります(ラヴェルの『道化師の朝の歌』、プロコフィエフの『ソナタ第3番』のメヌエットしかり)。

 

ラヴェルの作品では、ロマン派的に感情を押し出すことなく客観的に弾くよう強調していました。感情をむき出しにせず、リヒテルのように冷静に弾くことを繰り返し説きます(とてもヨーロッパ的❗)

 

一方プロコフィエフのピアノ曲においては、劇伴やオペラ・バレエからの転用(教授は“リサイクル”と言って会場を沸かせていました❗)ご多いことから、書いてある通りに正確に弾くことは大切だけれども、キャラクターを浮き立たせ、演劇的に表現することが重要、と語りました。

 

プロコフィエフについては、勿論いくつかの作品を聴いたことはあるけれども、伝記を読んだりCDを購入して聴いたことはなく、この歳になっても知らないことがあることに驚きつつ、勉強不足を反省。

 

博識のネルセシアン教授の講義(!?)は興味深く、プロコフィエフ『ソナタ第3番』にでてくる《メヌエット》は、オペラ『エフネギー・オネーギン』にでてくるメヌエットだから聴いておく方が良い、《道化師の朝の歌》は、オペラ《リゴレット》のリゴレットのような道化師を想像して、ラヴェルの《悲しき鳥》は、シューマンにこの曲と同じような曲があるから聴いてみて、そして後期リストも・・・。と曲の表現に繋がるイメージを所々に散りばめる。

 

あっという間の6時(休憩入れて7時間30分)の後は表参道でお茶を。変わった雲もスマホで撮影しご満悦。

 

いつまでも勉強。

 

皆様も自分のアンテナにピピッときたものを即座に捉えて獲得していってください❗新たな発見は人生を彩り豊かなものに変えてくれますから。

 

 

menu