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ソレイユニュース 2023年9月号

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  1. お堅い話を一席。

 

昔々、大学院生だった時、修士論文を書かねばならず、様々な本を読み漁ったことがあります。

 

大学院のオペラ公演が9月に終了し、論文提出までの期間が3ヶ月弱。400字詰め原稿用紙およそ100枚という量の論文を書くのに、3ヶ月でテーマを決めて章立てし、文献を探してまとめるのは、尋常でない大変さでした。

 

修士課程は通常2年ですが、オペラ公演の準備に時間が取られることもあり、皆、3年まで延ばして修了します。1年掛けて修士演奏と修士論文を仕上げれば良い訳で、文献を読む時間も充分与えられるのですが、運良く(財)アサヒビール芸術文化振興会の給費留学生に選ばれたことで(過去の栄光😅)、急遽2年生で修了しなくてはならず、3ヶ月での強行軍と相成りました。

 

ベルカントオペラの歴史と歌唱法、そしてベルカントオペラにおけるマリア・カラスの功績について書いたのですが、ベルカントオペラについての日本語の文献が殆どなく、その当時英語版しかなかった図書館に並んでいる『ニューグローブ世界音楽辞典』(全20巻プラス別冊3冊)の関連ページを読んだり、他の英語の書籍を読んで資料を集めました。

 

その時の経験から、家にあったらさぞ便利だろうと思ったこともあり、留学からの帰国直後、『ニューグローブ世界音楽辞典』の紙の表紙の全集を購入。全集というと小学生のための物語全集しか持っていなかった私は、音楽全集を購入したことに大興奮でした。

 

ある時、その『ニューグローブ世界音楽辞典』の日本語版が発売になったと聞きましたが、ハードカバーで数十万円ということもあり、購入を迷っていました。

 

夫の恩師、昭和音大教授でいらした早瀬一洋先生が亡くなられた際、奥様から『ニューグローブ世界音楽辞典』日本語版を遺贈したいとの連絡が入りました。夫を可愛がってくださった早瀬先生のご遺言を有難くお受けすることにし、川崎市のご自宅にハードカバーの全集を受け取りに伺いました。ご恵贈された書籍は今ここに並んでいます。

 

時々それが平置きされていることがあり(片付けられないともいう)、中学生くらいの時から、自分の演奏する曲について調べるためでしょうか、息子がよく読んでいました。

 

先日も、第15巻が出されていたのでページをめくってみると、恐らくブラームスを調べていたのでしょう、ブラームスが本の真ん中にドーンと載っていて、プーランク、プッチーニ、ブーレーズなどの作曲家は勿論、ブレンデルなどの演奏家、西アフリカの共和国ブルキナファソの音楽についても説明されていて、読みながらワクワクが止まりません。

 

プーランクの伝記は読んだことがなかったので読んでみると、洒脱な歌曲やピアノ曲で有名なプーランクは(フランス6人組作曲家としてもよく知られている)、実は正式に音楽学校で学んだことがないと知って驚く私。

 

オーストリアとロシアの軍隊がハンガリーに樹立した独立政権を打倒したことで、独立運動の参加者たちはハンブルクを通り北アメリカに移住。ハンガリーから北アメリカへの通り道であるハンブルクにハンガリー音楽が持ち込まれたことで“ハンガリー風”が大流行し、それ故ブラームスが『ハンガリー舞曲』を作曲した―――、なんてことも書いてあって感心すること仕切り。

 

 

昨年の藝祭(藝大の大学祭)の期間中、図書館が旧い蔵書を放出するイベントがあったようで、

 

「『ニューグローブ世界音楽辞典』英語版のハードカバー全集が3,000円だったから買っちゃった❗」

 

と、かなり浮かれた調子で報告してきた息子。

 

これも血のなせる業かと唖然。

 

3組69冊の全集を前に、途方に暮れる日々です。

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