ソレイユニュース 2019年9月号
今夏はお盆休みが取れたので、自宅の掃除と、3年分の息子の高校時代の教科書や配布資料の整理をしました。
教科書、センター試験用の問題集、参考書、ノートだけでも3年分集まると、それらを40〜50㎝積み上げた山が幾つも出来上がります。
今後使わないものだから、どんどん捨てたら?という夫の言葉を聞き流し、1冊1冊吟味しながら、捨てるものと捨てないものに分けていくと、膨大な時間が費やされることに。
本来ならば息子本人がやるべき作業なのですが、本人に任せると何年掛かるかわからない上に、言い続けることへの疲労から、つい手を下してしまいます。今回この作業をしたことで、今までモヤモヤしていたことへの答えが見つかったのは僥倖でした。
生きていく中で、私たちは色々な選択をしていきます。特に、職業や学校などの選択、付き合う人たち(結婚や友人関係も含む)の選択については、深く考えるものです。
最近、東大や医学部に入学し、音楽コンクールで入賞している人たちが話題になっています。そのような人たちに影響されてか、職業的な安定を確保しつつ、ビアノなどの好きなことを並行してやっていきたい、と希望する生徒さんたちがいて、そういう人たちに対して、私は大いに賛成、と伝えています。
音楽で進学したいけれど、将来のことを考えて一般大学に進学するかどうか迷っている人や、子供と保護者の間で意見が一致しないときに、何と助言したらよいか━━━、私はいつもそのことでモヤモヤしていたのでした。
夏休み中の分別作業で驚いたのは、ソルフェージュの授業で配布された、新曲視唱、クレ読み(ト音記号やヘ音記号だけでなく、ハ音記号も含む7通りの譜の読み方)、ビアノ初見、スコアリーディングの楽譜の量でした。その量たるや半端ではなく、藁半紙で40㎝の高さの山が2つ築かれました。量だけでなく、印刷されている問題の質にも魅了されました。
その他、校内のコンサートで使用した室内楽の楽譜や合唱つきオーケストラのスコア、ピアノ初見コンサートのためのアンサンブル作品や、ヴァイオリンの友人の伴奏譜などの楽譜がひと山。
更に、音楽鑑賞、音楽理論、和声学、音楽史の資料の藁半紙がひと山。音楽鑑賞の資料には、我が家では殆ど聴かないバロックより前の時代の曲や、現代作品の曲名が解説とともに載っていました。きちんと保存できれば、一生の貴重な資料です。
分別作業が終わり、ゴミ袋5袋分を捨てた後に残った藁半紙の山4つを眺めながら、1枚1枚はとても薄いけれど、中身の濃い藁半紙の塊に、先程の答えを教えてもらった気がしました。
専門教育を受けると、自分が興味を持つこと以外の専門的な知識を与えてもらう機会に恵まれます。それを経験するのとしないのでは大した違いはないように思えますが、今回のように可視化されると、一目瞭然です。
藁半紙160㎝は、玄人と素人とを分ける厚い壁なのですよ、藁半紙の束は私にそう語りかけているようでした。
将来を迷っている人に出会ったら、この話をしようと思います。