ソレイユニュース 2020年11月号
今年はベートーヴェン生誕250年ということで、年初から、全曲演奏など魅力的な企画が数多ありました。
covid-19のため、秋までの企画の多くは中止になりましたが、ここからベートーヴェンの誕生日である12月16日に向けて、世界各地で素敵なコンサートが催されることを希望します。クラシック界にとっては、大規模なアニバーサリーイヤーだけに、たとえ数ヶ月でも回復したことは大きな喜びです。
とはいえ、地方の会館では、秋に開催予定だった会館主催のコンサートやイベントなどを早いうちに中止にしてしまったということもあり、収容人数1000人超の大ホールが使われないという状況が続いているようです。
太田市民会館では、11月3日と8日、大ホールとスタジオ、そしてスタンウェイとヤマハのフルコンサートグランドを無料で貸し出す企画を打ち出しました。太っ腹です。
大泉町文化むらでは、大ホールを平日1時間あたり1,650円、日・祝には1時間あたり2,200円、スタンウェイとベーゼンドルファーのピアノを、1時間あたり1,100円で貸し出します。
コンクール前など、本番と同じようなシチュエーションで練習したい方にとっては、垂涎の企画といえるでしょう。
以前、都内のコンサートホールを“破格のレンタル料”で借りられる企画があったのですが、その料金は何と2時間47,000円でした(お金の話ですみません)❗
それでも“特別割引価格”と歌っていたのですから、文化むらの料金が、いかに安いか、お解りいただけると思います。
ヴァイオリンの方なども、大ホールの響きの中で練習するという経験も必要でしょう。
このように制限なく贅沢な空間を使えることなど今後ないかも知れませんから、この機会に経験してみては如何でしょうか。
先日、銀座YAMAHAサロンホールで開催された音楽学者上田泰史氏による『不規則の規則』〜サン=サーンスによるテンポ・ルバートの実践〜という研究会に出席しました。
ショパンのテンポ・ルバート(直訳は“盗まれたテンポ”音楽用語では“自由なテンポで”)は、ショパンの時代にどのように演奏されていたかという点について、現存している音源や弟子たちが残した記述を元に検証した勉強会です。
ショパンの生きていた頃は、録音機が発明されていなかったことから、全て想像の世界なのですが、ショパンの孫弟子であるサン=サーンスが弾いたショパンのノクターンの録音を実際に聴きながら、各小節内の時間の長さや左右の手のずれ等を考慮して図面化するという、音を可視化した画期的な取り組みがなされていました。
リズムの刻み方、メロディの歌い方(いわゆるルバートの方法)の規則を見つけて、現代の演奏に取り入れようとする試みです。
私は午前中だけしかいられなかったので、この研究発表だけでしたが、午後には『19世紀(ショパンの時代)のフランスロマン主義絵画の見方』という絵画についての講義、そしてその当時の知られざる名曲を、今注目の若手ピアニストたちが弾く、という魅力的なコンサートが連なっていました。
これは、外国から演奏家たちが入国できなかったための代替え企画だったということですから、まさに不幸中の幸い、悪いことばかりが続くわけじゃない❗感満載の、素敵な1日だったのです。