ソレイユニュース 2021年9月号
お盆中の長雨ですっかり涼しくなり、過ごし易さを喜んでいたら、残暑が戻ってきました。名残の蝉の声を聞きながらトンボが飛ぶのを眺めていると、暑い中でも秋の到来が感じられます。
8月22日(日)、ヴァイオリンの末永千湖先生クラスの生徒さんたちによる、Zoomでの夏休み自由研究発表会が開催されました。
“夏休みの宿題”で思い出すのは、何といっても自由研究です。
息子が小・中学校時代は、研究内容が理科に限定されていて、自分でテーマを決め、実験を行い、結果や過程を写真に撮ったり絵を描いたりして見易いように工夫し、説明文を書き結果をまとめるという、なかなか大変な作業だったことが思い出されます。
常々疑問に思っていることや、それまで知りたかったけれど調べるきっかけがなかったことなどの課題を持っていると良いのですが、何もないところからスタートすると、テーマを決めるだけでもひと苦労です。
今回の末永クラスの研究テーマは、“ヴァイオリンに関すること”。小学2年生から大人の生徒さん、そして末永先生を含めた全9名の方が、1人10分程度の持ち時間で発表、充実した研究会になりました。
子供の生徒さんの研究テーマは大きく3つに分かれていて、ヴァイオリンという楽器に関すること、自分が演奏する作品と作曲者について、ヴァイオリンの歴史に関することの3つ。
ヴァイオリンに関するテーマは、“弓”、“ニス”、“f字孔”について。演奏する曲についてのテーマは、“パガニーニ作曲 カプリス”について。ヴァイオリンの歴史に関するテーマは、“日本のヴァイオリン史”、“ヴァイオリンの歴史”について。
弓の研究をした小学校2年生は、ハンガーを用いて、たこ糸・お母様の髪の毛・タグス、それぞれで弓を作り、実際に弾いてみたり、弓の毛替えを行う工房に行き、毛替えの行程を見学、馬の毛の種類や入手方法を取材したりと、大人顔負けの多彩な研究内容でした。
弓の形が、いわゆる洋服のハンガーのようなC字形から現在のような反り弓に変化していったこと、馬の毛は、屠殺される前の馬のしっぽを切って使われていることなど、私も知らないことが多く、「弓の毛をそのように手に入れることを知ると、大切に使わなければいけないと思いました」と、道徳的な感想を聞くこともでき、意義深い発表となりました。
他の人たちも、きちんと調べたのは勿論のこと、発表するにあたり、楽器の形状を絵に描いたり研究内容を手書きやパワーポイントに纏めたりと、その多彩さにも驚くばかりでした。
最近、人気の演奏家たちが、素晴らしい研究を発表し話題となっています。
日本音楽コンクール第2位入賞の鐵百合奈さんは、音楽評論の登竜門とされる『柴田南雄音楽評論賞』を2年連続で受賞。
第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで第2位入賞さした川口成彦さんは、ショパンに関する評論を『音楽の友』誌で連載中。
お二人ともピアニストの片手間とは思えない内容です。
調べたことは演奏に反映されますから、どの演奏家にとっても下調べは大切なことです。
しかし、その域ではない、プロフェッショナルな研究家としての側面を持つ人が増えているのは、時代の流れでしょうか。
私自身を振り返ると、大学院時代に書いた修士論文が生まれて初めての研究でした。テーマを決め、文の構成を考え、外国語の書籍を含め大量の文献を読み、文章にまとめる。数ヶ月に亘る作業はとても大変だったけれど、このような形でソレイユエッセイを書き、ニュースを発行できるのは、あの時の修士論文作成経験のお蔭、と思います。
末永先生の呼び掛けに、参加を表明し、一生懸命課題に取り組んだ生徒さんと保護者の皆様に、心からの拍手を送ります。
素晴らしい機会を設けてくださった末永先生に心からの賛辞を。
この研究会が2回、3回と続いていくことを期待しています。