ソレイユニュース 2025年5月号
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5年に1度開催されるショパンコンクール予備予選が4月23日から始まりました。
2025年10月3日から23日まで、ポーランドのワルシャワで開催されるショパンコンクールは、第1次予選から本選まで4ラウンドで審査される世界最高レベルのピアノコンクールです。10月からのショパンコンクールに出場するために、参加者たちは世界で最も過酷な2つの関門に挑戦します。
第1の関門は、プロフィールや推薦状と共に提出する録画による審査。今年は応募総数642名。これに合格すると、第2関門のワルシャワでの予備予選に出場できます。
今回の予備予選は、4月23日から5月4日まで、1日およそ14人ずつ12日間行われ、171人が参加。12日間の審査が終了すると、約半分の人数に絞り込まれます。
この80数名に、予備予選免除となるエリザベート王妃国際音楽コンクール、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール、浜松国際ピアノコンクール、アルトゥーロ・ルービンシュタイン国際ピアノコンクールなど指定の国際コンクールの上位入賞者が加わりコンテスタントが出揃います。
ショパンコンクールは、数十年前からテレビドキュメンタリー番組が放映されるため、日本では圧倒的に有名なピアノコンクールです。
ショパンコンクールは、上位入賞すると世界的なレーベルと契約し世界中で演奏する、それまでとは全く違う演奏家生活が始まりますが、注目のコンクールのため、セミファイナリストくらいになると、世界の著名なコンサートホールから招かれ、ピアニストデビューする人も現れます。世界中のマネージメントに聴いてもらう絶好の機会という訳です。
ショパンは、ベッリーニのオペラが大好きだったと、ショパンの研究書には記述があります。当時のワルシャワは小パリと呼ばれる程、パリの流行を追っている街でした。パリで流行していたベッリーニのオペラは、初演後直ちにワルシャワの舞台で上演されました。
イタリアでベッリーニやドニゼッティのオペラを学んだ私の耳には、ショパンのピアノ曲はベッリーニのアリアのように聴こえます。礼儀正しいオーケストラ伴奏に乗った流麗なアリアを思わせるショパンの旋律は、ベッリーニの模倣のようです。
“悪魔に魂を売った”と言われた超絶技巧のヴァイオリニスト、パガニーニが出現するまで、細かい音の名人芸はオペラ歌手の独壇場でした。器楽奏者は、細かい音を並べて歌う歌手を模倣し、技を磨きました。レガート唱法も真似ました。
そういう意味で言うと、ショパンはベルカント技法の正統な伝達者だったのです。
それなのに日本のピアニストは、あまりオペラを聴きません。ショパンがベッリーニを模倣して作曲していることも知らない人がいます。残念なことです。
オペラが日常に溢れているイタリア人ピアニストがショパンコンクールで入賞しているのも頷けます。前回の第2位アレクサンダー・ガジェヴと第5位レオノーラ・アルメッリーニは共にイタリア人です。
ベッリーニ、ドニゼッティのオペラを沢山聴き、出場者の皆様には素晴らしいショパンを披露してくださるよう願っています。
ショパンコンクールと公式YouTubeでライブ配信を視聴することができます。是非世界最高峰のショパニストたちによる演奏をお楽しみください。