ソレイユニュース 2025年9月号
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今年は何とも暑い夏でした。伊勢崎市は最高気温41.8度を記録し、蝉も鳴かない言葉を失う暑さです。
暑い夏に負けないで頑張るには丈夫な身体が必要。ピアノでもヴァイオリンでも数時間練習するには足腰がしっかりしていないと無理ですが、声楽に至っては身体自体が楽器なので、体力がないとスタート地点にも立てません。
私が東京藝大に入って驚いたのは、声楽科の同級生たちが疲れ知らずだったこと。ある人は浪人中、アルバイトしながら練習や勉学に励み、入学後は1限目9時から、教職課程を取ると18時頃終わる5限目まで、ほぼ隙間ない時間割をこなしながら、遠くは鎌倉から毎日通学して、教授のレッスンに備えるため毎日練習をし、部活もこなすという異様さ。浪人を経て入学した人も多かったのだけれど、同級生たちは声量は勿論のこと、艶のある声、息の長さも驚異的で、速いパッセージも難なくこなす強者だらけ。上には上がいるものだと、入学後、驚愕の連続でした。
しばらくすると、特に歌の上手な人たちが同じような地域で育っていたことに気づきはじめました。歌の上手い人たちはアップダウンが多い土地出身者が多かったのです。山の多い鎌倉や長野、丘陵地が多い横浜など。かつて、北鎌倉女子学園中学・高校出身者が全日本学生音楽コンクールに常勝したり、藝大上位者に集中していた時代がありました。北鎌倉女子学園に行ったことがありますが、北鎌倉の駅付近から急峻な山の上にそびえ立つ学校が見え、実際足を運んでみると、徒歩での登りは、罰ゲームのような過酷さでした。否が応でも毎朝あの山に登らなければならない。中学1年で入学したら6年間毎朝登る訳です。遅刻しそうだったら走って登る。どんなに体力のない子でも6年間の登山登校により強靭な足腰が出来上がります。指導者が優秀だったこともありますが、この環境が北鎌倉女子高校出身の優れた声楽家を誕生させるのだと、大学生の私は確信したのでした。
高校時代まで全国的には無名のサッカー選手だった長友佑都選手は、坂の上にある高校までの坂を使い坂道ダッシュを決行。その結果、誰よりも足が速くなり、日本代表選手や外国リーグに所属する国際的に活躍する選手に成長。坂道に着目した着眼点と3年間努力することができた精神力が人生の勝敗を分けた好例です。
ここ太田市は関東平野の一部、標高239mの金山が市の中心部にあるだけで、あとは全てが平ら。自転車が難なく進む平らな土地ばかりです。日々の暮らしの中で坂道を利用した身体訓練ができないので、息子が幼い頃はベビーシッターの先生方(幼稚園の教諭を引退した先生方にお願いしていました)に、公園や家で遊ぶのではなく、標高239mの金山登山や数キロのお散歩をお願いしていました。幸い体育大学出身の先生がいらして担当してくださったのてす。小・中学校への通学は1.5kmの距離を毎日歩かせました。足腰の強靭さが体力を司り、体力が業績を作ると私は信じているので、皆様のご協力をいただき、息子が幼少期に理想的な身体作りをすることができたのは幸いでした。
中学・高校生になって声楽のクラスに入っていらっしゃる生徒さんが増えています。平野育ちのグズグズな足腰を鍛え上げる必要があり、坂道ダッシュを勧めていますが、痴漢の出没で長続きしません(女の子がひとり、街外れの山道で訓練するのは、とても危険なのです❗)。最近は、レッスン中に走ったり跳んだりという体操を取り入れてるようにしています。レッスン中の短い時間でもヘロヘロになる子がいますが、毎日根気よく続けている生徒さんの中には、急速に上達している人がいて、足腰の大切さを日々実感しています。
発声テクニックと強靭な足腰(体力)、そして病気にならない健康な身体を司るバランスの取れた栄養(+知力も必要❗)が声楽家を作ります。声楽家になりたい❗という彼らの希望を叶えるために、お母様方は、バランスの良い食事を整えてあげてください。
体幹のしっかりした、肌に輝きのある、免疫力の高い身体(そして少しの知力❗)があれば、声楽家に限らずどんな望みも叶えることができますから、生徒の皆さん、持続的な努力を惜しまないで毎日を送ってくださいね。
努力は嘘をつきません❗

