ソレイユニュース 2020年5月号
中村紘子著『ピアニストだって冒険する』(音楽の友社刊)を読みました。
このエッセイ集は、中村女史が大腸癌で亡くなる月まで、雑誌『音楽の友』に連載していたエッセイをまとめたものです。
『音楽の友』連載中から、世界のクラシック音楽界(クラシックピアノ界)の様々な事象を、歯に衣着せぬ物言いでズバズバ書き著すのが評判で、楽しく読ませていただいていました。
当教室には、40年前くらいから発行されている『音楽の友』全刊が揃っているので、引っ張り出せばこの連載を読むことはできるのですが、ハードカバーが欲しくて、改めて購入した次第。
歯に衣着せぬとは正にこの本のこと、というくらい、ピアノコンクールの裏側や、現在活躍しているピアニストへの評価、また、大宅壮一ノンフィクション賞受賞作家としての顔もお持ちの女史は音楽界以外の方々との交際もあり、本当にこんなこと言っちゃっていいの?と心配になるくらいの赤裸々な内容です。
ご自分の死期を悟り全てを吐露されているのだわ、と連載を読みながら思ったのでしたが、言いたいことを全部表出して、この世とさよならした中村女史は、気分爽快だったことでしょう❗
女子会話のようでもあり、読んでいる人間としては面白いのですが、これが文字として残ったことには、他人事ながらちょっぴり心配。
少女期の、他に類を見ないほど恵まれた生育環境、小さい頃にひたすら練習しニューヨークやヨーロッパに留学したときの体験談、若くしてピアニストデビューを飾ってからのエピソードなど、頭脳明晰で鋭い感性を持つ美しいピアニストの、その目に映る様々な事象が、見事に描かれています。
更にこの本からは、遺言のように、日本の音楽界を案じる思いが伝わってきます。
クラシック音楽が次の世代の人々に好まれるエンターテイメントであるための提言が随所に発せられているのです。
敗戦直後の日本でピアノをはじめ、少女期から日本のピアノ界を牽引し、世界レベルまで押し上げた中村女史は、そのピアニストとしての腕、地位、作家としての発信力、そして、世界に広がる様々な人脈を駆使して、日本のピアノ界の発展に尽くしました。あのような方は、そうそう簡単に現れないだろうと思います。
クスッと笑わせられたり、アレレ、と眉をひそめさせられたり等、私たちを巧みに誘導しながら、面白可笑しく世相を切り、確かな目標と視点を遺しました。
これを読むと、次に続く者たちのやるべきことがわかります。
是非、皆様読んでみてください❗
《追記》
新型コロナウイルスについて再び。
換気をよくする、手指の消毒、マスクは勿論ですが、免疫力を上げることに一層の努力を。
きちんと食べて、たっぷり寝て、一生懸命練習して、いっぱい笑う。
どれが欠けても、免疫力はダウンします。
このコロナ危機、明るく元気に乗り越えていきましょう皆様❗❗❗