ソレイユニュース 2026年8月号
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音楽の世界では、夏はフェスティバル&講習会の季節。世界的にはアメリカのタングルウッド音楽祭やオーストリアのザルツブルグ音楽祭等が有名です。演奏会が主だったり講習会が中心だったりとフェスティバルにより趣向は様々ですが、気候的に涼しかったり風光明媚な場所で行われることが多く、演奏者も受講生も観客も半分ヴァカンスを兼ねて参集するのは楽しい慣習です。
日本では北海道のパシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)や長野県のセイジ・オザワ松本フェスティバル、そして地元群馬県の草津音楽夏期国際音楽アカデミー&フェスティバル等がよく知られています。蒸し暑い酷暑の街を離れ、涼風が吹く美しい土地で繰り広げられるコンサートとレッスン。夏の解放的な雰囲気と相まってレッスンもアンサンブルもコンサートも気持ちよく進みます。私もそのような夏期フェスティバル&レッスンには、若い頃随分参加しました。
パリ国立高等音楽院(以下、CNSMDP)教授が勢揃いし、フランス音楽が特集された1988年の草津音楽夏期国際音楽アカデミー&フェスティバルと第1回京都フランス音楽アカデミーでは、エダ・ピエール CNSMDP教授に師事、フランスオペラと歌曲をたっぷり習いました。
トゥール・ポワティエの戦いで有名なフランス南西部の街ポワティエで行われたポワティエ夏期音楽アカデミーは、池内友次郎藝大教授(作曲)が引率する藝大生を中心とした生徒団がCNSMDP教授陣から3週間のレッスンを受けるシステムで、ロワール地方の古城ツアーなどの観光も充実した、フランス初体験者にぴったりの講習会でした。
イタリア留学後、夏の講習で行ったのがシエナのアカデミアキジアーナ夏期講習会。世界的オペラ歌手カルロ・ベルゴンツィ氏のレッスンが受けられるということでオーデションの倍率が高く充実した講習会でした。ベルゴンツィ氏によるプライベート講習会にも2クール通いました。日曜を除く毎日レッスンがあり、1クール3ヶ月、計6ヵ月、ベルゴンツィ氏が経営するホテルに宿泊し、地下のパーティルームでレッスンを受けます。どちらの講習会にも世界中から受講生が集まり、その後、彼らは世界のオペラ劇場にデビューしていったので、そのレベルの高さが想像できるでしょう。色々な声域の素晴らしい歌手を毎日聴くことができたことで、随分耳が鍛えられたのは幸せなことでした。
このように書き出してみると、私は恵まれた教育を受けることができたのだとしみじみ思います。思う存分レッスンを受けさせてくれた母に感謝しかありません。この一連の勉強のお蔭で今があるのだと実感しています。
今夏、息子からパリ郊外の夏期フェスティバルに参加したと報告が届きました。師事しているCNSMDP教授から促されて参加したらしいのですが、ラ・フォル・ジュルネの主催者が運営する少人数のレッスンとコンサートという形式で行われる夏期フェスティバルで、ピアノ付きの個室を与えられ小さなお城での生活と食事付き、という恵まれた環境。2日で先生が変わっていき、生徒はMAX5名まで、時間が許せば先まで滞在を延ばせるという懐の深さ(勿論レッスン付きで!)。毎日のレッスンと毎日開催されるコンサートがセットになった数日を過ごしたようです。ところが本人、毎日コンサートがあることを知らなかったようで、初日、夕方シャワーを浴びて髪を乾かしていたら、本番5分前です!と呼び出しがあり、慌てて服を着換えて有料コンサートに出演したらしい。あまりに息子らしいエピソードに笑ってしまいましたが、本当に間に合ってよかった(笑)。どなたの寄附かは不明ですが、全て無料だったということに驚かされました!
夏の開放的な環境の中、存分に練習する時間を持ち充実したレッスンを受けられるのは幸せなこと。恵まれた環境に感謝し、実力を上げていってほしいものです。
文責 小林真衣子

